ー続いては、アンクル*¹のツメ石*²修正です。実はこれ・・・個人的にかなりお気に入りなんです。
関:あ、ありがとうございます(照)
ーこれは本当に今年一番心を揺さぶられました。
関:まだ今年始まったばかりだけどね。
(※このインタビュー風のやり取りは2021年2月初旬におこなわれました。)
ーキュンです。
関:うざいよ。
ーまず、事の始まりなんですが。お見積りの時点でアンクルのツメ石にクラック(ひび)が入ってるのを確認してたんですよね。
関:そうですね。でも、その時は使えないこともないな、という風に判断しました。
ーアンティークの交換用パーツを探すのはとても大変ですからね。見つかる保証もないですし。
関:はい。できる限り使用できるものは使用していかないといけないので。で、アンクルはクラックがあるということで、超音波洗浄機*³は控えて、ベンジンで軽くはけ洗いだけにしておこう、と。
ーそしたら、まさかのはけ洗いでその部分から欠けてしまったんですよね。
関:はい。ものすごく焦りました。
~以下、そこからのやり取りです。~
関:ツメ石、欠けちゃった。
僕:えぇ!?そんなパーツ無いでしょ。完全に使えないんですか?
関:うん。衝撃面の半分くらいが欠けちゃってるから・・・
【次の日】
関:このアンクルのツメ石を加工してみようと思うんだけど。
僕:はい!?
関:昨日からずっと考えてたんだけど。欠けてる部分を削り落とせば使えると思うんだよね。
僕:いやいや、それは無理でしょ!
関:角度さえ保って削れば、あとはツメ石出せばいいわけだからいけると思うんだよね。
僕:絶対無理ですって!アンクルのツメ石の角度なんかめちゃめちゃシビアですよ!?しかもルビーだし!パーツ探してみますよ!!
関:ちょっとやってみるよ。
僕:・・・。(心の声:時間の無駄でしょ・・・)
【次の日の次の日】
関:できたよ。
僕:うそでしょ!?
関:表面の仕上がり具合がちょっと気にはなるけど、いけるんじゃないかな。とりあえずこれで時計に組み込んで様子見てみるよ。
僕:・・・。(心の声:どうせまともに作動しないでしょ・・・)
【次の日の次の日の次の日】
関:1日経過しても順調に動いてるよ。振り角*⁴もまずまず出てるし。これでいけると思うから、そのまま進行するよ!
僕:・・・。(心の声:・・・キュン。)
〜〜〜
つづく。
以下、かなりかみ砕いた用語説明。
*¹アンクル・・・巻かれたゼンマイがため込んだパワーを輪列(複数の歯車)を経由して受け止めて、テンプが回転するための力を伝える。と、同時にテンプが回転するリズムを受けとめて伝える役目をもった部品。
*²ツメ石・・・アンクルの先にはめこまれている2つのルビー。輪列の最後の歯車(ガンギ車)の歯先と接触する部分。その部分を衝撃面という。
*³超音波洗浄機・・・分解掃除(オーバーホール)において時計のムーブメントパーツを分解して洗浄するさいに、超音波のでる洗浄機にかけて汚れをクリーニングする。超音波は、強力に汚れを落とすという便利な反面、繊細なパーツに対しては刺激が強すぎる面もある。
*⁴振り角・・・テンプが回転してる角度。調子の悪い時計はテンプの回転が鈍く、振り角が低く、精度も不安定になる。逆に元気が良すぎて振り角が高すぎるとそれはそれで問題有り。
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