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  • kiyo

専門的な話が続くと疲れますよ。

ーそれでは、作業内容のほうを伺っていきたいと思います。まずは天真*¹製作から。天真製作といえば時計旋盤*²の基本ですよね。少し前までは時計学校の課題にも必ず入ってきていましたし。とはいえ、今の時計修理はパーツは交換が主流の時代です。その例に漏れず、うちでも実践で天真を製作することってほとんど、、、というか無いですよね。

関:そうなんですよね。それこそ、アンティーク系であったり、パーツの入手ができないもの以外はその必要性がないし。さっきも言ったけど、そういうものってこれまでは泣く泣く断ってきたので。これまでにも、巻き芯*³であったり、天真であったりが破損していて、パーツの入手ができないために、お断りしてきた修理品が時々あったけど、そのたびに作って修理できたらなぁと思ってて、、、


ーそれで、先ほどからの繰り返しになりますが、うちも幅を広げていこうということで隙間時間を見つけては、色々な作業を試したり、勉強するようになって。その中でももちろん時計旋盤を触る機会が増えたと思います。天真や巻き芯制作の練習もよくしてましたよね。時計学校時代にも、WOSTEP*⁴のカリキュラム内容に入ってたので、散々作ったと思いますが。

関:やっぱりまずは天真、巻き芯が基本かなって。でもやり始めは本当に大変でした。時計学校時代に散々作ってたとはいえ、十数年のブランクがあったから。作り方にしろ、切削の感覚にしろ、何から何まで忘れちゃってて。それでもなんとか四苦八苦してるうちに色々感覚は戻ってきました。徐々に時間の短縮とクオリティーも満足のいくものができるようになってきて。


ー今回のウォルサムの修理でも天真交換をされましたね。

関:はい、天真のホゾ(先端)が摩耗していたので交換が必要だったのですが、パーツが無いので、別作させていただきました。


ーそして、今回は新たな試みをされたんですよね。

関:そうそう、ワッ・・・


ーワックスチャック。

関:とるなよ、おれのワックスチャック!


ーなんだかいいたくなるんですよね、ワックスチャックって。響きがよくて。ワックスチャック。

関:わかるわかる(笑)なんかいいたくなるんだよね。


ー・・・え、もしかしてワックスチャックって言いたかっただけですか?

関:ちがうよ!ちゃんとその方法でやる意味があるんだよ!


※ウオッチラボは大阪にある修理会社ですが、関は千葉出身ですのでツッコミは標準語仕様になっています。日常会話ではエセ関西弁を多用していますが。

※埼玉だよ!!(関)


ーまずそのワックスチャックですが、どういったものかお聞かせください。

関:そのままの意味で、温めると緩んで、冷やすと固まるワックスで加工物をチャックング(つかむ)する方法です。今回は、昔の時計修理の技術本に掲載されている内容を参考にしました。固めるためのワックスはシェラックと呼ばれるものを使用して。


ーその方法を採用する意図は?

関:これは時計旋盤に限った話では無いんですけど、精度が求められる加工物を切削するさいの理想は、最初にチャッキングしてから、途中で一度もチャッキングをし直さないことなんです。どんなに慎重にチャッキングし直しても、前のチャッキンングのセンターと次のチャッキングのセンターは、厳密に言うとずれてしまうから。でも、天真製作の工程ではチャッキングをし直さないといけない場面があって。天真のホゾ(先端)はとても細くて、今回のポケットウォッチで、直径は10分の1ミリ、腕時計用になってくるともっと細くて、100分の7ミリとか。それで、そのホゾが天真の両端にあって、それぞれがそんなに細いからこそ、少しのセンターのズレが、時計の精度においてものすごい大きな影響を及ぼしてしまうんだよね。で、そのチャッキングをし直すときにワックスチャックを使うと、限りなくセンターが出るっていう。


ーなるほど、要するにワックスチャックを使うと加工精度が良いってことですね。すごく便利じゃないですか。

関:ただ、通常のやり方に加えて一手間がかかるんだけど、その一手間がなかなか手間で。シェラックを入れるための器(コレット)を作らないといけないんだけど。円錐型にして、片側の天真で受けれるように。そもそも両側のセンターを精密にそろえるための治具だから、その円錐の中心の頂点は完全に出てないと意味がなくて、それがすごく大変で。


ーそんなに甘くないってことですね。それで肝心の仕上がりはどうだったんですか?

関:仕上がり的にはやっぱり、手間がかかってるぶんの精度は出たはずです。


ーそれは、良かったです。

関:あとは、今回天真がテンワに圧入式だったんだけど、初めて見たタイプで。通常は天真がテンワに対してかしめられてるのが普通だから。改めてアンティークものは新たな発見があって楽しいよ。


ーへぇー。

関:あれ?興味ない?


つづく。


以下、専門用語をかなりかみくだいた説明。

*¹時計旋盤・・・時計修理用の旋盤。時計のパーツ加工等を対象としているため、通常の旋盤よりもとても小さい。旋盤とは、対象物を回転させて切削する工作機械。

*²天真・・・テンプの真ん中の軸のこと。テンプとは振り子時計でいう振り子のこと。

*³巻き芯・・・リューズにくっついている軸。リューズと時計の中の機械(ムーブメント)とを繋ぐための軸。リューズとは時計のゼンマイを巻いたり、時間合わせをしたりするための部分。

*⁴WOSTEP・・・時計修理の資格の一つ。













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